中国の自動車部品市場で、エアサスペンションの国産化が急速に進んでいる。中国工程院の院士である郭孔輝氏(90)とその息子が率いる孔輝科学技術(Konghui Automotive Innovation)が、新エネルギー車(NEV)向けに供給を拡大し、市場で存在感を高めている。

90歳院士と息子が率いる技術系企業

孔輝科学技術は、著名な自動車工学研究者である郭孔輝氏が2007年に設立した。当初は技術コンサルティングを主事業としていたが、後にエアサスペンションの開発・製造へ軸足を移した。

現在は息子の郭川氏が社長として経営を牽引している。父子による二人三脚で技術開発と事業拡大を進めており、長年の研究で培った技術力を背景に、高品質な製品を開発している。

NEV市場の成長を追い風に躍進

中国のNEV市場は近年、政府の強力な後押しもあり、爆発的な成長を遂げた。これに伴い、乗り心地を向上させる高性能なエアサスペンションの需要も増加している。

孔輝科学技術はこの市場機会を捉え、積極的に生産能力を増強。現在では、新興EVメーカーの「嵐図汽車 (VOYAH)」や「Li Auto(リ・オート) (Li Auto)」などに製品を供給している。中国メディアによると、同社の躍進は、これまで外資系サプライヤーが優位だった市場構図を大きく変えつつあるという。

日本にとっての意味

孔輝科学技術の台頭は、日本の自動車部品メーカーにとって複数の影響をもたらす。まず、これまでZFやコンチネンタルといった欧米企業が支配的だったエアサスペンション市場において、中国国内メーカーが急速にシェアを拡大している事実は、日本の既存サプライヤーが中国市場で競争優位を維持することの困難さを示す。特に、新エネルギー車(NEV)市場の成長を背景に、孔輝科学技術が嵐図汽車(VOYAH)やLi Auto(リ・オート)といった有力EVメーカーに供給を拡大している点は、日本企業がNEV向け部品供給で後れを取るリスクを明確にする。

第二に、90歳の郭孔輝院士が創業し、息子が経営を牽引する同社の成功は、中国政府が推進する「国産化」政策の強力な推進力を改めて浮き彫りにする。日本企業は、中国市場での事業戦略において、単なるコスト競争だけでなく、中国政府の産業政策や国内サプライヤー育成への傾倒をより深く理解し、現地企業との連携や共同開発といった新たなアプローチを模索する必要がある。

最後に、孔輝科学技術が当初技術コンサルティングからエアサスペンション開発に軸足を移した経緯は、中国企業が市場のニーズに迅速に対応し、事業モデルを柔軟に転換する能力を示唆する。これは、日本企業が中国市場で生き残る上で、技術力だけでなく、市場変化への適応力と機動性が不可欠であることを示唆している。