中国の映像業界で、コンテンツの質を左右する脚本が軽視され、人気俳優のキャスティングが優先される構造的な問題が浮き彫りになっている。著名な脚本家である汪海林氏が、市場の買い付けメカニズムに警鐘を鳴らした。

「脚本中心主義」が根付かない背景

中国の映像業界では「脚本中心主義」の重要性が叫ばれているものの、その実現は困難な状況にある。汪海林氏は、その主な理由として、コンテンツの買い付けの仕組みが脚本の質ではなく、俳優の人気に大きく依存している点を挙げる。

同氏によると、中国の映像市場では、買い手は脚本の質で価格を決めるのではなく、人気俳優が出演するかどうかで判断する傾向が強いという。本来、作品の価値は脚本の質で決まるべきだが、現状では脚本は参考程度にしか見なされていないと、同氏は中国メディアの取材で指摘した。

IP偏重とコンテンツの本質

中国の映像市場は、IP(知的財産)を極めて重視する点も特徴だ。しかし汪海林氏は、IPも重要だが、最終的にはコンテンツの中身こそが最も重要だと強調する。

同氏は例として「Netflixがワーナー・ブラザースを買収したのは、コンテンツが最優先だからだ」と述べ、優れたコンテンツを持つことの戦略的重要性を訴えた。俳優の人気やIPの知名度だけに頼るのではなく、物語の中核をなす脚本の価値を再評価すべきだと主張している。

日本への影響と示唆

中国映像業界における「脚本軽視・俳優人気優先」の構造問題は、日本企業にとって二つの具体的な影響と機会をもたらす。第一に、中国市場でコンテンツ展開を目指す日本の制作会社や配信プラットフォームは、中国の買い手が「人気俳優が出演するかどうかで判断する傾向が強い」という点を認識し、キャスティング戦略を再考する必要がある。例えば、日本の人気俳優を起用することで、コンテンツの買い取り価格や配信契約において優位に立てる可能性がある。これは、単にコンテンツの質だけでなく、市場の特性に合わせた戦略的アプローチが求められることを意味する。

第二に、中国市場で質の高い脚本家やクリエイターとの協業機会が生まれる可能性がある。汪海林氏が警鐘を鳴らすように、中国国内では脚本の価値が十分に評価されていない現状がある。このため、日本の制作会社は、中国の優秀な脚本家と共同で企画を開発し、日本市場や国際市場向けに質の高いコンテンツを制作する機会を探るべきだ。例えば、日本の資金力や制作ノウハウと、中国の豊かな物語資源やクリエイティブな人材を組み合わせることで、両国にとって新たなビジネスモデルを構築できる。これは、中国の構造的課題を逆手に取り、日本の強みを活かす戦略的提携の可能性を示唆する。