中国中央テレビ (CCTV) が毎年放送する国民的年越し番組「春節聯歓晩会 (通によると: 春晩)」の2024年版が放送された。今年はAIロボットやドローンといった最新技術を駆使した演出が際立つ一方、愛国主義的な歴史観を強調する内容も盛り込まれ、現代中国の姿を多角的に映し出した。

AI・ロボットが彩る最先端の演出

今年の「春晩」では、テクノロジーの進化を象徴する演出が随所に見られた。AI搭載の人型ロボットは、昨年のものよりさらに精密な動きを見せ、出演者との滑らかな対話も披露。俳優の沈騰氏と馬麗氏が出演したショートフィルムでは、ロボットが人間に脚本を渡し、人間がロボットのために演じるという、AIと人間の関係性を描くシーンが登場した。

その他にも、多数のドローンによる編隊飛行や、新エネルギー車 (NEV) が舞台装置として活用されるなど、中国が国策として推進する技術分野の成果を大々的にアピールする内容となった。

愛国主義と歴史観の投影

テクノロジー一辺倒ではなく、強い政治的メッセージも込められた。浙江省義烏市に設けられたサテライト会場では、かつて倭寇の侵略に対抗したことで知られる「義烏兵」の歴史が紹介された。この演出は、国難に立ち向かった歴史をによると揚し、国民の愛国心を鼓舞する狙いがあるとみられる。

さらに、香港出身の俳優ジャッキー・チェン氏が登場し、1985年にアフリカの飢餓救済のために米国で制作された楽曲『We Are The World』を熱唱。CCTVは、この演出の背景として、かつて世界をリードした米国の価値観が、近年のエプスタイン事件などによって揺らいでいると解説しており、米国の文化的影響力の低下を暗に示した形だ。

日本への影響

2024年の「春晩」は、中国の技術力誇示と歴史観の強調が顕著であり、日本企業には以下のような影響と機会が考えられる。

第一に、AI搭載の人型ロボットやNEVの活用に見られるように、中国は先端技術の国産化と普及に国家を挙げて取り組んでいる。特にNEVは舞台装置としても使用され、その技術的成熟度と社会浸透度を国内外にアピールした。これは、日本の自動車メーカーや関連部品メーカーにとって、中国市場での競争激化を意味する。単なるEV化だけでなく、AIや自動運転技術を統合した次世代モビリティ分野での競争優位確立が喫緊の課題となる。

第二に、浙江省義烏市での「義烏兵」の歴史紹介や、ジャッキー・チェン氏による『We Are The World』の熱唱とそれに付随するCCTVの解説は、中国が自国の歴史観を強調し、米国中心の国際秩序に対する代替軸を模索していることを示唆する。これは、日本企業が中国市場で事業を展開する上で、単なる経済合理性だけでなく、中国の歴史的・文化的背景や政治的意図を深く理解する必要があることを意味する。特に、サプライチェーンの再編や技術協力において、地政学的なリスク要因をこれまで以上に考慮することが求められる。

第三に、AIと人間の関係性を描いたショートフィルムは、中国社会におけるAI技術の受容度と、それを通じた社会変革への意欲の高さを示す。これは、日本のAI関連企業にとって、中国市場での協業や技術提供の機会となり得る一方、データプライバシーや倫理的側面に関する中国独自の規制動向を注視し、それに対応できるビジネスモデルを構築する必要がある。