広東省深圳市が、金取引に関する規制を強化している。市地方金融管理局は、企業や個人、金融機関、ノンバンクの決済サービス事業者による金取引の禁止行為を通達。違法な取引の横行が背景にある。

当局は、予約価格取引やレバレッジ取引、繰延取引といった先物まがいの取引を「違法な金取引」と定義。インターネット上で金の回収や予約価格での売買を名目に保証金を集め、価格変動に応じて差額を決済するような行為を禁じている。

相次ぐ支払いトラブルと当局の対応

今回の規制強化は、市内で金取引を巡るトラブルが多発したことが引き金となった。北京市中倫文徳(深圳)法律事務所の冷勇達弁護士によると、宝飾品取引の中心地である水貝(シュイベイ)国際宝石取引センターでは近年、違法な金取引で資金繰りが悪化する業者が続出。多くの消費者が多額の損失を被ったという。

深圳金融犯罪法務専門委員会の孫霖主任は、当局の通達で「違法な資金調達」などの文言が使われている点に注目。規制の姿勢が単なる「警戒勧告」から「警告した」へと引き上げられたとの見方を示した。市当局は今後、違法取引を行う業者への取り締まりを強化し、無資格業者の調査を厳格に進める方針だ。

支払い不能に陥るプラットフォーム

実際に、現地の金取引プラットフォームでは支払い不能が相次いでいる。水貝の金地金取引業者、深圳市傑我睿宝石有限公司が運営するプラットフォーム「傑我睿(Jierui)」は、2024年1月20日頃に支払い不能に陥った。同社は近年、個人投資家向けに予約価格での金取引サービスを展開していた。

1月末には、同様のビジネスモデルを持つ「雲点当(YundianDang)」でも支払いの遅延や停止が発生。これらのプラットフォームは、利用者が注文時の価格で金の売買を確定させ、業者が現物の金を受け取った後に決済する仕組みだが、利用者が期日までに金を納められない場合、高額な保証金を無収するケースもあった。

羅湖区の専門チームは1月28日、「傑我睿」の経営異常を把握し、直ちに介入したと発表。同チームの指導の下、「傑我睿」は資産売却や資金調達を開始し、オンライン・オフライン双方で返金対応窓口を設置した。第三者機関による監査の初期結果では「インターネット上で拡散されている被害額は著しく誇張されている」と報告されたが、現在も多くの利用者が返金を受け取れていないと訴えている。

日本への影響

深圳市における金取引規制の強化は、日本企業にとって二つの具体的な影響をもたらす。第一に、中国市場における金融商品、特に実物資産を裏付けとする投資スキームへの参入を検討する日本企業は、現地の規制動向をこれまで以上に綿密に調査する必要がある。今回の規制強化は、予約価格取引やレバレッジ取引といった「先物まがいの取引」を違法と定義しており、これは日本企業が中国市場で展開しうる金融サービス設計に直接的な制約となる。例えば、日本の貴金属商社や金融機関が、中国の富裕層向けに金投資商品を提供する際、現行のビジネスモデルが中国当局の「違法な金取引」の定義に抵触しないか、厳格なリーガルチェックが不可欠となる。

第二に、サプライチェーンにおけるリスク管理の重要性が増す。記事にある水貝(シュイベイ)国際宝石取引センターのように、宝飾品や貴金属の取引が集中する地域では、不正な金融取引がサプライチェーン全体に波及し、取引先の信用リスクを高める可能性がある。実際に「傑我睿(Jierui)」や「雲点当(YundianDang)」といったプラットフォームの支払い不能は、関連する中小企業や個人事業主に深刻な影響を与えている。日本の宝飾品メーカーや商社が中国のサプライヤーと取引する際、単に製品の品質だけでなく、サプライヤーの財務健全性や、違法な金融取引への関与がないかといったデューデリジェンスを強化する必要がある。特に、中国国内の金融規制が強化される中で、隠れた信用リスクが顕在化する可能性を考慮し、取引先の選定基準を厳格化することが求められる。