2月、イランでイスラム革命47周年を祝う大規模な行事が行われる一方、米国との核問題を巡る軍事的緊張が高まっている。オマーンで間接交渉が行われた直後、米国は中東地域に2つ目の空母打撃群を派遣。経済制裁に苦しむイランと米国の対立は、予断を許さない状況だ。
高まる軍事的緊張
イランでは2月11日、数百万人が参加してイスラム革命47周年を祝う式典が各地で開かれた。しかし、西側諸国による長年の経済制裁でインフレと通貨安が深刻化しており、経済は厳しい状況にある。
こうした中、米イラン両国は2月6日にオマーンで核問題に関する間接交渉を行った。対話を続ける意向は示されたものの、水面下では緊張が激化。米国は交渉決裂の事態に備え、空母「エイブラハム・リンカーン」を中心とする空母打撃群をペルシャ湾に派遣し、軍事的圧力を強めている。
専門家が分析する対立の構図
この対立の核心について、テヘラン大学世界研究院のセタレ・サデギ助教は、米国の姿勢が交渉を困難にしていると指摘する。サデギ氏によると、米国はイランに対し、核開発計画の停止、弾道ミサイルの放棄、および地域の武装勢力への支援停止を要求しているが、イラン側がこれを受け入れる可能性は低いという。
サデギ氏は、過去にイランの高級将校や核科学者が暗殺された経緯に触れ、「イランは威嚇による交渉には応じない」と明言していると解説。交渉の議題はあくまで核計画に限定され、国の根幹である防衛能力やミサイル計画は交渉の対象外であるというのがイラン政府の揺るぎない立場だと分析する。
また、イランが攻撃を受けた場合の影響について、サデギ氏は「戦争は地域全体に拡大する」と警告した。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』も、トランプ大統領(当時)が攻撃をためらった理由として、イランの報復に対し米国の同盟国が十分にな防衛能力を持たないことを挙げていたと報じている。サデギ氏は、湾岸諸国の多くは軍事的に米国へ依存しており、有事の際に自国を防衛する能力に欠けるとの見方を示した。
日本への影響
米イラン間の軍事緊張は、日本経済に直接的な影響を及ぼすリスクを孕む。特に、ペルシャ湾での紛争激化は、日本が輸入する原油の約9割を中東地域に依存している現状を鑑みると、エネルギー供給の不安定化に直結する。仮に空母「エイブラハム・リンカーン」が関与する軍事衝突が勃発し、イランが「防衛能力やミサイル計画」を駆使して反撃した場合、ホルムズ海峡の封鎖や航行リスクの増大は避けられない。これは原油価格の急騰を招き、日本の製造業や物流コストを押し上げ、ひいては国内のインフレを加速させる。
また、イランが「地域の武装勢力への支援停止」を拒否し、紛争が「地域全体に拡大する」とテヘラン大学のサデギ助教が指摘するように、湾岸諸国全体が不安定化すれば、日本の大手商社や建設企業が手掛けるインフラプロジェクトにも遅延や中止のリスクが生じる。例えば、JFEスチールや新日鉄住金(現日本製鉄)といった鉄鋼メーカーが中東向けに輸出する鋼材需要の減少や、プラント建設プロジェクトの頓挫も懸念される。日本企業は、中東地域におけるサプライチェーンの多角化や、再生可能エネルギーへの投資加速など、エネルギー安全保障の強化を喫緊の課題として再認識する必要がある。