米国が「裏庭」と見なす中南米で、経済的影響力を増す中国に対抗する動きを強めている。特に中国企業が主導するペルーの港湾開発を巡り、米政府は安全保障上の懸念を表明。米中の地政学的な綱引きが、同地域で新たな局面を迎えている。
ペルー・チャンカイ港巡る米中の綱引き
米国が特に問題視しているのが、中国の国有海運大手コスコ・シッピング・ポーツがペルーで建設を進める大規模港湾「チャンカイ港」だ。米政府関係者は、この港が中国の軍事利用に転用される可能性に強い懸念を示し、ペルー政府に働きかけを強めていると報じられている。
この動きは、中南米を自国の勢力圏と位置づけ、外部勢力の干渉を容認しない米国の伝統的な外交姿勢を反映したものだ。特にトランプ前政権以降、中国の「一帯一路」構想を通じた影響力拡大への警戒感が高まっており、バイデン政権もその路線を継承している。
圧力に揺れる中南米諸国
一方、中南米諸国は米国の圧力と、中国がもたらす経済的利益との間で難しい舵取りを迫られている。多くの国にとって中国は最大の貿易相手国であり、インフラ投資の重要なパートナーでもあるからだ。
ベネズエラ、キューバ、ニカラグアなど一部の反米的な国々は、米国の制裁に対抗して中国やロシアとの関係を深める。その他の多くの国々は、米中いずれか一方に与するのではなく、双方と実利的な関係を築こうとする全方位外交を展開しており、地域の地政学は複雑な様相を呈している。
結論:日本への示唆
ペルーのチャンカイ港を巡る米中の地政学的競争は、日本企業にとって中南米におけるサプライチェーン再編の機会とリスクを同時に提示する。まず、コスコ・シッピング・ポーツが主導するチャンカイ港の軍事転用懸念は、日本企業が同地域でのインフラ投資や物流網構築を検討する際に、パートナー選定におけるデューデリジェンスの強化を促す。特に、港湾インフラは二重用途の可能性を常に孕むため、契約内容や運用監視における透明性確保が不可欠となる。
次に、中南米諸国が米中双方との全方位外交を志向している点は、日本企業が第三国市場で中国企業との競合・協調関係を再考する契機となる。例えば、日系自動車メーカーや商社が中南米で事業展開する際、中国からの部品供給網や物流経路に過度に依存している場合、米国の対中圧力強化が予期せぬサプライチェーン寸断リスクをもたらす可能性がある。このため、代替調達先の確保や、米国と連携したインフラプロジェクトへの参画を通じて、リスクヘッジを図るべきだ。
最後に、ベネズエラやキューバなど一部の反米的な国々が中国との関係を深めている状況は、日本企業がこれらの市場に参入する際の政治的リスクを増大させる。米国が制裁を強化する可能性を考慮し、進出の可否や事業規模を慎重に判断する必要がある。一方で、米国が中南米における影響力回復に注力する中で、米国と協調する形でインフラ整備や技術供与に関与する機会も生まれ得る。