中国で、ドローンや「空飛ぶクルマ」などが活用される「低空経済」(低高度空域を活用した新たな経済圏)の育成が加速している。春節(旧正月)休暇明けから、重慶市や海南省など複数の地方政府が相次いで振興策を発表。中央政府も安全確保に向けた保険制度の整備に乗り出しており、官民一体で新産業の創出を目指す。
各地で相次ぐ振興策
春節休暇明けの業務再開日に合わせ、多くの地域で低空経済に関する新たな計画が打ち出された。重慶市梁平区では「低空の都で新年を祝う」と題したイベントを開催。航空機の地上展示やフライトシミュレーター体験を通じ、市民に新たな産業分野をアピールした。
海南省は「人工知能(AI)プラス」行動計画を発表し、低空産業の発展を重点プロジェクトに掲げた。また、遼寧省は低高度を飛行する航空機の開発支援を、江蘇省南京市は商用利用の具体的事例を創出する方針をそれぞれ明確にした。こうした各地の動きは、中国が国策として低空経済の発展を後押しする姿勢の表れだ。
安全確保へ保険制度を整備
一方、産業の健全な発展には安全性の確保が不可欠だ。国家発展改革委員会の研究員である張林山氏は、低空経済は大きな将来性を持つものの、その飛躍への道のりは容易ではないと指摘。低高度空域の管理は、事業の採算性だけでなく、国家の安全保障や公共の安全に直結するため、計画から技術、運用、監督管理に至る全プロセスで安全を最優先する必要があると強調する。
こうした課題に対応するため、国家発展改革委員会など3部門は最近、「低高度飛行向け保険の質の高い発展を推進するための実施意見書」を公表した。新華社通信によると、同意見書は専用の保険制度の確立を急ぎ、低空経済の安全な発展を支援する方針を明確にしている。
日本への影響
中国が「低空経済」を国策として推進する動きは、日本企業にとって複数の具体的な影響をもたらす。まず、ドローンや「空飛ぶクルマ」の商用化が中国で先行すれば、関連技術の標準化において中国が主導権を握るリスクがある。例えば、重慶市梁平区がイベントで市民にアピールしたようなフライトシミュレーターや、海南省が重点プロジェクトに掲げるAI技術は、将来的な国際標準の基礎となり得る。日本企業が開発する機体やシステムが、中国発の標準に適合させる必要が生じる可能性があり、技術開発戦略の見直しが求められる。
次に、中国国内市場における競争激化と新たなサプライチェーンの形成が予想される。国家発展改革委員会など3部門が「低高度飛行向け保険の質の高い発展を推進するための実施意見書」を公表したように、安全保障体制の整備と並行して市場が急速に拡大すれば、中国企業が先行者利益を享受する。特に、日本企業が強みを持つ精密部品やセンサー、バッテリーなどの分野でも、中国国内での垂直統合が進むことで、日本からの部品供給需要が限定される可能性がある。
最後に、中国の低空経済の発展は、日本の空域管理や法整備にも影響を与える。中国が官民一体で安全確保と産業育成を進めるモデルは、日本が「空飛ぶクルマ」などの実用化を目指す上で、規制緩和と安全確保のバランスをどう取るかという議論に新たな視点を提供する。中国の事例を参考に、日本の法整備やインフラ整備を加速させる機会ともなり得る。
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