中国のスマートフォンメーカー、魅族科学技術(Meizu)は2月、スマートフォンの新規ハードウェア開発を中止し、AI(人工知能)分野へ全面的に移行する新戦略を発表した。熾烈な競争が続くスマホ市場から事実上撤退し、経営資源を再配分する。

「All in AI」戦略への全面転換

魅族は「All in AI」のスローガンを掲げ、従来のスマートフォン事業を抜本的に見直す。今後は、自社開発のOS「Flyme」をオープン化し、提携するサードパーティー製のハードウェアへ提供する事業に注力する。また、AIを活用した新たなデバイスの開発にリソースを集中させる計画だ。

この決定について、同社の沈子瑜(シェン・ズーユィ)会長兼CEOは「スマートフォン市場の過当競争は、技術革新よりも低価格競争に陥っている」と指摘。同社は、より創造的で将来性のあるAI分野に活路を見出すと説明した。中国メディアによると、既存のスマートフォン製品のサポートは継続されるという。

創業21年、スマホ市場での栄枯盛衰

2003年にMP3プレーヤーメーカーとして創業した魅族は、2009年にスマートフォン市場へ参入。独自のUI(ユーザーインターフェース)やデザイン性の高い製品で、中国の若者を中心に人気を博し、一時は市場で重要な地位を占めた。

しかし、近年はファーウェイ(ファーウェイ技術)やシャオミ(シャオミ)、OPPO(オッポ)、VIVOといった巨大メーカーとの競争が激化。市場シェアは低迷し、経営は苦戦を強いられていた。創業者の黄章(ホアン・ジャン)氏も、過去に事業の難しさを吐露していた。

日本企業への示唆

魅族の「All in AI」戦略は、日本のサプライヤーにとって二つの異なる影響をもたらす。まず、同社がスマートフォン新規開発を中止したことで、村田製作所やTDKといった電子部品メーカーは、魅族向け部品供給という直接的な取引機会を失う。特に、魅族が2009年にスマートフォン市場に参入して以来構築してきたサプライチェーンからの離脱は、既存の取引関係の見直しを迫る。

一方で、魅族がOS「Flyme」のオープン化とAIデバイス開発に注力することは、新たなビジネスチャンスを生む。同社が提携するサードパーティー製ハードウェアへの「Flyme」提供は、日本の半導体メーカーやセンサーメーカーにとって、新たなAIデバイス向け部品供給の可能性を開く。例えば、ソニーグループのイメージセンサー技術は、魅族が目指すAIデバイスの性能向上に貢献できる可能性がある。

この動きは、中国市場におけるスマートフォンのコモディティ化がさらに進み、AI技術が次の主要な競争軸となることを示唆している。日本の企業は、単に既存のスマートフォン市場でのシェア争いに留まらず、魅族のようにAIを核とした次世代デバイス開発に経営資源をシフトする中国企業の動向を注視し、その技術革新の波に乗るための戦略を再構築する必要がある。特に、AIデバイスにおける高付加価値部品やソリューション提供に焦点を当てることで、新たな収益源を確保できるだろう。