調査会社のGartnerとIDCによると、2026年の世界のスマートフォン出荷量は、前年比で8.4%減少する見通しだ。IDCは、最大で12.9%の減少もあり得ると予測している。背景には、AI (人工知能) データセンター建設の需要急増に伴う半導体メモリなど重要部品の供給不足があり、中国のスマートフォンメーカーMeizu (メイズ) が事業転換を表明するなど、市場再編の動きが加速している。

AI向け半導体需要がスマホ市場を直撃

2025年初頭から続くAIデータセンターの建設ラッシュは、半導体メモリやストレージの需給を逼迫させている。この影響は2026年に入っても解消されず、生産能力の不足からメモリ価格は高騰を続けている。この供給不足が、スマートフォンメーカーの生産計画とコスト構造を直撃した形だ。

スマートフォン市場全体の縮小は避けられない情勢で、特に中堅メーカーは厳しい経営判断を迫られている。部品コストの上昇分を製品価格に転嫁できない場合、収益性が大幅に悪化するためだ。

Meizuはスマホ自社開発から撤退

こうした状況下、中国のスマートフォンメーカーMeizuは、事業の大きな方向転換を決定した。同社は2025年末の時点で、メモリコストの上昇がプロセッサーやカメラのコストを上回り、スマートフォン原価の最大の圧迫要因になっていると明らかにしていた。

そして2026年2月下旬、Meizuはスマートフォン新製品の自社開発を中止すると発表。今後は外部のハードウェアパートナーと協力し、自社はAI主導のソフトウェア開発に注力する方針だ。独自の「Flyme OS」を基盤としたオープンエコシステムの構築を目指すとしている。

大手メーカーは価格転嫁、市場は二極化へ

Meizuの撤退は、スマートフォン市場の二極化を象徴する動きだ。サムスン (Samsung) やシャオミ (Xiaomi)、vivo(ビーボ)といった大手メーカーも、メモリ価格高騰によるコスト圧力に直面している。各社は2026年1〜2月にかけて発表した新製品で、軒並み価格を引き上げた。

大手メーカーはブランド力と販売規模を背景にコスト上昇分を価格に転嫁する一方、Meizuのように体力の劣る中堅メーカーはハードウェア事業からの転換を迫られる。この結果、市場は高機能・高価格帯のフラッグシップモデルと、機能を絞った廉価モデルへと、さらに二極化が進むとみられる。

日本にとっての意味

GartnerとIDCが予測する2026年のスマートフォン市場8.4%縮小は、日本の電子部品・素材メーカーにとって新たなビジネス機会とリスクを同時にもたらす。AIデータセンター向け半導体メモリ需要の急増は、ロームや村田製作所のような受動部品メーカーにとって、車載向けに加え新たな高収益市場を意味する。データセンター向け電源回路や冷却システムに不可欠な部品需要が拡大するため、これらの企業は供給能力増強を急ぐべきだ。

一方、スマートフォン市場の縮小とMeizuの撤退は、スマートフォン向け部品供給を主軸とする企業に再編を促す。特に、SamsungやXiaomiといった大手メーカーへの依存度が高い企業は、彼らが価格転嫁を進める中で、部品コスト削減圧力が強まる可能性がある。例えば、ディスプレイ部品を供給するジャパンディスプレイやシャープは、高価格帯モデルへのシフトを加速させる大手メーカーの動向に合わせ、高付加価値製品への注力を強化する必要がある。また、Meizuのようにソフトウェア開発に軸足を移す中国企業との協業により、新たなソフトウェア・サービス領域での部品需要創出も模索すべきだ。市場の二極化は、日本企業が供給する部品の種類や品質にも影響を与えるため、ポートフォリオの見直しが急務となる。