2025年は人型ロボットの「商業化元年」と目され、市場が急速に立ち上がっている。中国では春節(旧正月)のイベントから工業生産、物流まで活用が広がる。テスラの「Optimus」や中国のUBTECH(UBTECH(優必選)科学技術)などが万台規模の生産体制構築を目指しており、産業の発展が加速している。

中国サプライチェーンの圧倒的なコスト優位性

人型ロボット市場における中国の強みは、政策支援を背景としたサプライチェーンのコスト競争力にある。モルガン・スタンレーの調査によると、2025年に中国のサプライチェーンを活用して人型ロボットを製造する場合、部品コスト(BOM)は約4万6000ドルに抑えられる。これに対し、中国以外のサプライチェーンでは約13万ドルに達すると試算されており、その差は歴然だ。

量産化が市場拡大の鍵

量産化の実現は、市場成長を牽引する重要な鍵となる。高工産業研究院(GGII)のデータによれば、中国の人型ロボット市場は2030年までに約380億元(約7800億円)規模に達し、2024年から2030年までの年平均成長率(CAGR)は61%を超える見通しだ。モルガン・スタンレーは、物理的な世界で動作するAIが実用化へ移行するにつれ、人型ロボット産業が数兆円規模の市場を創出する可能性があると予測している。

コストの7割を占める「実行層」

人型ロボットは主に、センサーなどの「感知層」、AIによる「意思決定層」、動作を担う「実行層」で構成される。コストの大部分(約70%)を占めるのが実行層であり、アクチュエーター、モーター、減速機、ベアリングなどが含まれる。特にアクチュエーターは、モーターの回転運動を関節の動きに変換する基幹部品であり、性能とコストがロボット全体の競争力を左右する。

日本にとっての意味

中国の人型ロボット市場が2030年に380億元規模へ拡大するとの予測は、日本企業にとって直接的な脅威と新たな機会を提示する。まず、中国サプライチェーンが人型ロボットの部品コスト(BOM)を約4万6000ドルに抑える能力は、日本のロボットメーカーにとって価格競争力の低下を意味する。特に、コストの約70%を占める「実行層」部品、例えばアクチュエーターや減速機において、日本の精密部品メーカーは技術的優位性を維持しつつも、価格面での競争激化に直面する。このコスト差は、テスラ「Optimus」のようなグローバルプレイヤーの調達戦略にも影響を与え、中国製部品の採用を加速させる可能性がある。

一方で、年率61%で成長する中国市場は、日本の得意とする高精度センサーや特殊素材、あるいはロボット開発・運用を支援するソフトウェア・サービス分野において新たなビジネスチャンスを生み出す。例えば、中国の春節イベントや工業生産現場での人型ロボット活用が進むにつれ、より高度な安全性や信頼性が求められる場面が増える。このニーズに対し、日本企業は単なる部品供給に留まらず、中国企業との共同開発やライセンス供与を通じて、自社の技術を新たな形で市場に投入できる。中国のUBTECHのような量産を目指す企業との連携は、日本の技術がグローバルスタンダードとなる可能性も秘めている。しかし、知的財産権保護の強化や技術流出リスクへの対策は不可欠である。