中国・北京の宇宙ベンチャー、穿越者有人宇宙科学技術(Beijing TransOrbiter Aerospace Technology)が、2028年に準軌道(サブオービタル)宇宙飛行の実験を計画していることが分かった。同社の宇宙船「穿越者1号(CYZ1)」は中国初の商業有人宇宙船となる見込みで、宇宙旅行市場への本格参入を目指す。
準軌道飛行、2028年に実験へ
同社が目指すのは、2028年に実施する準軌道飛行の実験だ。この飛行は、地球周回軌道には乗らずに宇宙空間に到達し、数分間の無重力状態を体験した後に地球へ帰還する弾道飛行を指す。
開発中の「穿越者1号」は、この準軌道飛行を実現するための再利用可能な有人宇宙船である。技術的には、長期間の生命維持システムや軌道上での複雑な運用を必要とする軌道飛行とは異なり、短時間での飛行制御や機体の安全性がより重視される。
商業化への期待と課題
この準軌道飛行の商業的な可能性に注目が集まっている。計画では、1人あたり300万元(約6,000万円)のチケットで、数分間の無重力体験を提供する。中国メディアによると、富裕層を中心に新たな市場を開拓する可能性があるという。
一方で、準軌道飛行には特有の技術的課題も存在する。短時間での急加速と減速に耐える機体の構造的な完全に性や、緊急時の脱出システムの信頼性確保が不可欠だ。準軌道飛行の成功が、より高度な軌道飛行技術の確立に直結するわけではないとの指摘もある。
日本の関連性
中国の宇宙ベンチャー、Beijing TransOrbiter Aerospace Technologyによる準軌道宇宙旅行の動きは、日本の宇宙産業に新たな競争と協力の機会をもたらす。
まず、日本の宇宙ベンチャー、特に宇宙旅行分野を目指す企業にとっては、中国市場への参入障壁となる可能性がある。同社が2028年の実験を経て、1人あたり300万元という価格設定で商業化を進めれば、日本の富裕層をターゲットとした宇宙旅行市場においても、価格競争やサービス内容での差別化が求められるだろう。例えば、日本の「スペースウォーカー」のような企業は、単なる無重力体験に留まらない付加価値の提供を検討する必要がある。
次に、宇宙船「CYZ1」の開発進展は、日本の部品メーカーや素材産業にとって新たなビジネスチャンスを生む可能性がある。再利用可能な機体や緊急脱出システムなど、安全性と耐久性が重視される準軌道飛行技術は、日本の高品質な精密部品や先端素材の需要を高めるかもしれない。中国企業がサプライチェーンを確立する過程で、技術力のある日本企業との連携を模索する可能性も考えられる。
最後に、中国の宇宙開発が商業化を加速させることで、宇宙空間におけるルールの策定や安全保障の議論が活発化する。日本政府や関連企業は、宇宙交通管理やデブリ対策など、国際的な枠組み作りにおいて中国との協調・競争のバランスを見極め、日本のプレゼンスを確保する必要がある。特に、準軌道飛行が一般化すれば、空域と宇宙空間の境界線や、民間宇宙活動の国際法上の位置づけなど、新たな法的課題が浮上するだろう。