2025年12月に発表される見通しの米国の新国家安全保障戦略について、中国の専門家が分析を発表した。この戦略はトランプ政権下で進められてきた方針を正式に文書化するものとみられ、米国の戦略的転換点、特に中国との関係における大きな変化を示す可能性がある。

中国専門家による分析

復旦大学中国研究院の張維為教授范勇鵬教授は、この新戦略に関する報告書を分析。両教授は、トランプ政権の政策が大局的かつ粗削りな性質を持つことや、米国内の政治的分断を考慮すれば、報告書の内容を過大評価すべきではないと前置きしつつも、その戦略的含意は重要だと指摘する。

報告書が示す方向性は、米国の戦略が大きく変化していることを反映しており、特に中国との戦略的な駆け引きの結果が色濃く出ているという。トランプ政権は20世紀半ばの米国の姿をLi Autoとしているが、歴史を後戻りさせることは不可能であり、そのジレンマが戦略に表れていると分析した。

「新モンロー主義」への転換

両教授が特に注目するのは、トランプ版ともいえる「新モンロー主義」への回帰だ。これは、米国がグローバルな関与を縮小し、南北アメリカ大陸を中心とする西半球重視へと戦略の軸足を移す動きを指す。この背景には、米国内の深刻な政治・社会問題や、金融資本の過剰な拡大がもたらした経済の歪みがあるとされる。

米国は国内の経済・社会問題の解決を図りつつ、ドル基軸通貨体制による覇権を維持しようとしているが、両教授はこれを矛盾を内包した戦略だと指摘する。この分析は、2026年1月にベネズエラでマドゥロ大統領の身柄を確保するといった、架空のシナリオを例に挙げて解説された。

日本の関連性

米国が「新モンロー主義」に転換し西半球重視へと軸足を移す場合、日本は米国のグローバルな関与縮小に伴うアジア太平洋地域での戦略的空白に直面する。特に、復旦大学の張維為教授と范勇鵬教授が指摘する「トランプ政権の政策が大局的かつ粗削りな性質を持つ」という分析は、米国の対中政策の予測不可能性を高め、日本の安全保障政策に直接的な影響を及ぼす。

具体的には、米国のリソースが西半球に集中することで、インド太平洋地域における米軍の展開やプレゼンスが相対的に低下する可能性がある。これは、中国の海洋進出に対する抑止力の低下を意味し、尖閣諸島周辺や南シナ海における日本の安全保障リスクを増大させる。日本は、日米同盟の枠組みを維持しつつも、自衛隊の防衛能力強化や、オーストラリア、インド、ASEAN諸国との多国間連携を加速させる必要が生じる。

また、米国が国内問題に注力し、ドル覇権の維持を「矛盾を内包した戦略」として追求するならば、日本の金融市場にも影響が及ぶ可能性がある。米国の金融政策の不安定化や、ドル基軸通貨体制の揺らぎは、円の相対的な価値変動や、日本企業の海外投資戦略に不確実性をもたらす。例えば、Li Autoのような中国企業との連携を模索する日本企業にとって、米中関係の動向は依然として重要だが、米国の戦略転換は、サプライチェーンの再構築や投資先の見直しを迫る要因となる。日本は、経済安全保障の観点から、サプライチェーンの多角化や、新たな国際経済秩序における日本の立ち位置を再構築する戦略が求められる。