米最高裁判所は2026年2月20日、トランプ前政権が導入した広範な追加関税について、議会の権限を侵害しており違法であるとの判断を下した。この判決は、米国の保護主義的な通商政策の転換点となる可能性があり、中国や欧州連合(EU)などとの貿易関係に大きな影響を及ぼす見通しだ。
背景:議会を迂回した関税措置
トランプ前政権は第二期(2025年)において、国家安全保障を名目に通商拡大法232条を適用し、鉄鋼・アルミニウムだけでなく幅広い品目に対して一斉に追加関税を課した。この措置は、議会の承認を経ずに大統領権限で発動されたため、導入当初から法的な正当性を問う声が上がっていた。
最高裁判決の要旨
最高裁は判決理由で、通商拡大法232条の適用範囲を厳格に解釈し、「国家安全保障上の脅威」が広範な輸入品目に及ぶとの政権の主張には十分にな根拠がないと指摘。関税賦課という議会固有の権限を、行政府が過度に侵害するものだと結論付けた。この判決により、対象となった追加関税は効力を失うことになる。
今後の焦点と各国の反応
判決を受け、現政権は関税政策の見直しを迫られる。ただし、議会内や産業界には保護主義を支持する声も根強く、代替措置を巡る議論が活発化する公算が大きい。一方、これまで報復措置を取り合ってきた中国やEUからは歓迎の声明が相次いでおり、世界貿易機関(WTO)を舞台とした対話が再開される可能性もあると、ロイター通信は伝えている。
日本への影響と今後の展望
米最高裁によるトランプ前政権の追加関税違法判断は、日本企業に複数の影響を及ぼす。第一に、鉄鋼・アルミニウム製品を米国に輸出する日本企業は、2025年以降に課されていた追加関税が撤廃され、コスト競争力の回復が見込まれる。特に、日本製鉄や神戸製鋼所など、米国向けに高付加価値の特殊鋼材を供給する企業にとっては、収益改善に直結する。
第二に、この判決は、中国との貿易環境にも影響を及ぼす。米国が保護主義的な関税政策を転換する可能性が高まり、中国からの対米輸出が活発化すれば、日本企業が中国市場で直面する競争環境が変化する。例えば、中国製部品を調達し、米国市場で完成品を販売する日本企業は、サプライチェーンの再構築や調達先の見直しを迫られる可能性がある。
第三に、世界貿易機関(WTO)を舞台とした多国間協議の再活性化は、日本の貿易政策に新たな機会をもたらす。米国がWTOの枠組みを重視する姿勢に転じれば、日本が主導する自由貿易協定の交渉が加速し、国際的な貿易ルール形成において日本の影響力が高まる可能性がある。これにより、日本企業はより安定した国際貿易環境下で事業展開できる期待がある。